…for you.
恋のある風景.
俳句&文◎中島ちなみ
写真◎南浦 護






逢へぬ日の空を映してしやぼん玉

春雪にともして君を待つ灯かな

若草やあなたを好きになれたこと

いま発てば逢へる逢へると花の雨

花の夜のまだ濡れてゐる髪の芯

桜蘂降る一人に空の青すぎて

化粧ふるに筆の幾本さみだるる

白繭や見てはいけない夢を見て

櫂をまかせて拡げたる白日傘

ほうたるの火のふうはりと届かざる

星涼しくてシャンパンのピンク色

水中花ひとりの酒のすぐさめる

待たされて待たせて星の逢ふ夜かな

口癖を真似て夕月夜をひとり

泣きたくて泣けず泣きたくなくて秋

レコードに細き疵ある夜長かな

花野風会ひたくなれば目を瞑り

まだ好きと思ふ紅葉の雨に濡れ

小春日のふいに呼び捨てされてより

その髪にその掌に触れてからの雪

もうすぐ会へるクリスマスツリーの灯

見えぬものありて倖せ枇杷の花

思ひ出の数約束の数去年今年

春隣ひとりの部屋にともす灯も

どうか、この集の一句が、
あなたの恋の小さな懸け橋となりますように……。

haiku&words by Chinami Nakashima/photograph by Mamoru Minamiura